厚生労働省が2025年1月23日に発表した第192回社会保障審議会医療保険部会の資料から、
令和7年度の予算案が医療提供体制の安定と将来を見据えた変革を明確に打ち出していることが
明らかになりました。特に、医療従事者の皆様には、今回の予算案における「予防」と
「デジタル化」への重点投資の背景と、今後の医療現場が向かうべき方向性について理解を深めて
いただくことが重要です。
医療基盤を支える10.2兆円の国庫負担
令和7年度予算案では、医療費の国庫負担額が10兆2,619億円と計上されています。これは、 国民が必要な医療を確実に受けられるよう、国の医療基盤をしっかりと支えるという強い姿勢の 表れです。この予算には、薬価改定や高額療養費の見直し、食費基準額の引き上げなど、 医療現場の実態に合わせた費用増が反映されており、医療提供の安定化に貢献することが 期待されます。
「予防・健康づくり」への先行投資を強化
一方で、持続可能な医療保険制度を構築するため、予算案では「予防・健康づくり」への先行投資 がこれまで以上に強調されています。具体的な施策として、以下のようなものがあります。
国民健康保険の保険者努力支援制度(1,292億円): 保険者による健康増進事業への支援
高齢者の介護予防と一体となった保健事業の推進(1.3億円): 高齢者の健康寿命延伸を 目指す
糖尿病性腎症患者の重症化予防事業(6,600万円): 特定の疾患における重症化を 未然に防ぐ
これらの取り組みは、「病気になってから治療する医療」から、「病気になる前に健康を維持・ 増進する医療」への転換を促すものです。健康寿命の延伸は、個人の生活の質(QOL)を高める だけでなく、将来的な医療費の抑制にもつながるため、極めて重要な視点と言えるでしょう。
医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進
さらに、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進にも力が入れられています。 特に、NDB(National Database)データのさらなる利活用促進のための予算が 増額されます。これは、データに基づいた効率的かつ質の高い医療提供体制の構築、 そして医療従事者の業務効率化への期待を示しています。デジタル技術を活用することで、 よりパーソナライズされた医療や、遠隔医療の推進など、新たな医療サービスの提供も 可能になります。
医療現場に求められる対応
令和7年度の予算案は、医療現場に「予防」と「デジタル化」という二つの大きな視点での対応を 求めています。私たち医療従事者は、これらの変化を理解し、日々の診療や業務に積極的に 取り入れていくことが求められます。予防医療の推進、デジタル技術の活用、そしてデータに 基づいた医療の実践を通じて、国民の健康を守り、持続可能な医療保険制度の実現に 貢献していくことが、今後の重要な役割となるでしょう。
出典:厚生労働省 第192回社会保障審議会医療保険部会