日本の医療セーフティーネットとして重要な役割を果たす高額療養費制度が、
2025年8月より段階的に見直されます。これは、医療費の増加と現役世代の保険料負担増大に
対応し、持続可能な制度運営と国民の負担軽減を目指すものです。厚生労働省が2025年1月23日に
発表した第192回社会保障審議会医療保険部会の資料によると、主な変更点は以下の2点です。
1. 自己負担上限額の段階的見直し(2025年8月より実施)
所得に応じた自己負担上限額が調整されます。特に、年収370万円〜770万円の層では、自己負担上限額が約10%引き上げられます。高所得者層は引き上げ幅が大きく、低所得者層は小さくなるように設計されており、これにより、より公平な負担を目指す方針です。
【ポイント】
対象者: 全ての所得区分
主な変更点: 所得に応じた自己負担上限額の調整。特に年収370万円〜770万円の層で約10%引き上げ
目的: 所得に応じた公平な負担の実現
2. 70歳以上の外来医療費特例の見直し(2026年8月より実施)
70歳以上の外来医療費に関する特別な上限額が、所得区分に応じて細分化されます。
ただし、住民税非課税で所得80万円以下の方については、現行の上限額が維持されます。
これにより、低所得高齢者への配慮が継続されます。
【ポイント】
対象者: 70歳以上の外来受診者
主な変更点: 外来医療費の特例上限額の所得区分に応じた細分化。住民税非課税で
所得80万円以下の方は現行維持
目的: 制度の持続可能性と低所得高齢者への配慮
国民の保険料負担抑制への期待
これらの見直しにより、一人あたりの年間保険料は約1,100円〜5,000円軽減されると試算
されており、国民全体の保険料負担抑制につながることが期待されます。
医療現場への影響と求められる対応
制度の複雑化が予想されるため、厚生労働省は2025年8月の最初の変更に向けて、広報活動を強化
する見込みです。 医療従事者としては、患者さんの受診行動や経済状況への影響を理解し、
適切な情報提供とサポートが求められます。今後も制度の詳細や影響を注視し、患者さんの健康と生活を守るため、高額療養費制度の正しい理解と活用を支援していくことが重要です。
出典:厚生労働省 第192回社会保障審議会医療保険部会