日本の厚生労働省は、質の高い高度医療を効率的に提供するため、「特定機能病院」制度を
設けています。これは、高度な医療の提供、医療技術の開発、そして高度医療に関する研修を
行う能力を備えた病院を、厚生労働大臣が個別に承認するものです。
2022年12月1日現在、79の大学病院本院を含む88病院が特定機能病院として承認されています。
役割と承認要件
特定機能病院の主な役割は、高度医療の提供、高度医療に関する研修、高度医療技術の
開発・評価、および高度な医療安全管理体制の確保です。
承認には厳格な要件があり、以下の項目が含まれます。
病床数:400床以上。
紹介・逆紹介率:紹介率50%以上、逆紹介率40%以上。
人員配置:医師は通常の約2倍の配置で、半数以上が専門医。管理栄養士も1名以上。
研究実績:査読付き英語論文年間70件以上。
病院は「総合型」と「特定領域型」に分類されます。総合型は16の主要診療科を全て標榜し、
特定領域型はがんや循環器疾患など特定の疾患に特化し、より高い紹介率・逆紹介率
(80%以上・60%以上)が求められます。
制度の進化と今後の課題
医療安全対策は制度の進化において特に重要視されており、2016年には医療安全管理責任者の
配置や事故報告の義務化などが大幅に見直されました。
2021年には第三者評価の受審が義務化され、質の確保が図られています。
現在の議論では、大学附属病院の役割や高度医療の定義の見直し、
特定領域型病院の要件明確化が課題です。
また、特定機能病院以外の病院でも先進医療や難易度の高い疾患の受け入れが増え、
研究・研修機能の一部で特定機能病院の実績が低い傾向が見られる点も指摘されており、
医療環境の変化に応じた機能と役割の進化が求められています。
出典:厚生労働省 第26回特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会資料