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厚生労働省の医療保険部会は、2026年度目標の「標準的な正常分娩費用の自己負担無償化」に向けた制度設計を本格化しています。
この議論において、医療職からは現行の周産期医療提供体制の維持が最優先事項であるとの強い意見が示されました。
事務局報告では、現在の出産育児一時金(50万円)でも、平均費用が超過するケースが多く、妊婦負担の実質的な軽減が課題とされています。
一方で、専門委員は、少子化や物価高騰により一次施設(診療所)の経営が逼迫している現状を指摘。拙速な制度設計が収益性を悪化させ、一次施設の分娩撤退を招けば、ローリスク妊婦が三次施設に集中し、わが国が誇る小規模分散型の医療安全体制が崩壊するリスクがあると警鐘を鳴らしました。
今後の焦点は、2025年冬頃に策定予定の給付体系の骨格に、以下の専門的論点をどう反映させるかです。
1.標準的費用の定義とコスト構造:地域の差や自由診療ベースの施設コストを考慮した「標準化」の範囲。
2.多様な出産への対応: 無痛分娩や助産所出産など、多様なサービスと安全性を確保した上での給付の在り方。
3.付加価値サービス(アメニティ等)との分離と見える化
単なる無償化ではなく、安全な医療の質と地域体制を維持できる、慎重かつ具体的な制度設計が強く求められています。

出典: 第201回社会保障審議会医療保険部会 令和7年11月23日
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