地域医療計画を策定する上で重要な「圏域」の設定は、各医療分野の特性に応じた柔軟な考え方が求められます。主要な6つの事業における圏域設定の考え方と関連する通知のポイントを解説します。
1. 救急医療
救急医療では、患者の重症度や緊急度に応じて、医療機関の役割を明確にすることが重要です。地域の実情に合わせて、ひとつの施設が複数の役割を担ったり、医療圏を再設定したりすることもあります。特に、命に関わる救命救急医療では、患者を一定時間内に搬送できるような医療圏の整備が求められます。
2. 災害時医療
災害時には、原則として都道府県全体を医療圏とします。災害拠点病院が中心となり、大規模災害に備えた体制を整えます。また、自らが 被災した場合の対応や、都道府県をまたいだ広域連携体制の構築も不可欠です。災害の規模に応じて、救命救急センターやその他の医療機関も連携して対応します。
3. 周産期・小児医療
周産期医療と小児医療は、地域の医療資源に合わせて柔軟に医療圏を設定します。周産期医療では、重症例以外の診療が圏域内で完結することが目標です。重症な母体や新生児に対応する総合周産期母子医療センターは、原則として三次医療圏に1か所整備することとされています。 小児医療も同様に小児地域医療センターを中心とした診療状況を考慮して医療圏を定めます。
4. 新興感染症
新興感染症への対応では、患者が地域内で必要な診療を受けられるよう、従来の医療圏にとらわれずに柔軟な体制を構築します。特に、重症患者や特別な配慮が必要な患者に対しては、都道府県単位での対応など、地域の実情に応じた柔軟な体制が求められます。
このように、それぞれの医療分野の特性を考慮した最適な医療圏設定と連携体制の構築が、質の高い 医療提供を実現する鍵となります。
第116回社会保障審議会医療部会