高齢者の医療保険や介護保険の自己負担割合を決定する重要な基準の一つに「現役並み所得」があります。この判定は、現役世代と同等の「負担能力」があるかを見極めるために設けられています。
現状の「現役並み所得」判定基準(医療保険)
現在、後期高齢者医療制度などにおける「現役並み所得」(窓口負担3割)の判定は、主に以下の2つの要件を満たすかどうかで行われています。
1.課税所得要件:世帯内のいずれかの被保険者の課税所得が145万円以上であること。
この基準は、2004年度(平成16年度)当時の協会けんぽの平均収入額(夫婦二人世帯モデル:約386万円)から諸控除を引いた課税所得額(145万円)を基に設定されています。
2.基準収入額要件:世帯の被保険者全員の収入の合計額が、単身世帯で383万円以上、複数世帯で520万円以上であること。この収入額は、高齢者モデル世帯(年金と給与収入の両方があるモデル)の課税所得が145万円となるように逆算して設定されています。
介護保険との基準の違い
一方、介護保険の「利用者負担における現役並み所得者」の基準は、医療保険とは異なり、「合計所得金額220万円以上(個人)」かつ「年金収入とその他の合計所得金額が340万円以上(複数世帯は463万円以上)」という基準が用いられています。
課題と今後の方向性
この医療保険における「現役並み所得」の判断基準は、2006年(平成18年)以降見直されておらず、時代の変化や現役世代の負担増、そして2022年10月に導入された後期高齢者医療制度での2割負担制度の施行状況などを踏まえ、基準のあり方そのものについて見直しが検討されています。現役並み所得に該当する高齢者は全体の約7%に留まっており、高齢者の「負担能力」をより適切に図るための基準への変更が検討の軸となっています。

出 典:第203回社会保障審議会医療保険部会 令和7年11月13日
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65886.html
PDF:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001594826.pdf