日本の医療現場は今、瀬戸際に立たされています。先日開催された中央社会保険医療協議会
(中医協)総会(第607回)では、医療機関を取り巻く厳しい経営状況が詳細なデータとともに
示されました。令和8年度の診療報酬改定に向けた議論の火蓋が切られましたが、現場で働く私たち
医療従事者にとって、今回のデータは危機感を募らせるものとなりました。
深刻化する医療機関の経営状況
資料からは、以下のような厳しい現状が浮き彫りになっています。
国民医療費の増加と受診患者数の減少傾向
国全体の医療費は増加しているにもかかわらず、個別の医療機関における受診患者数は
減少傾向にあり、病院の病床利用率も厳しい水準にあります
経常利益率・事業利益率の低下
医療法人の経常利益率や病院の事業利益率が軒並み低下しています。特に、
新型コロナウイルス感染症に関する補助金の影響を除くと、多くの医療機関では経常利益が
マイナスに転じているという深刻な状況です。
経営圧迫の主な要因は「人件費」と「物価高騰」
この厳しい状況の主な要因は、人件費と物価高騰が大きく占めています。
人件費
私たち医療従事者の給与額は増加傾向にあるものの、産業全体の賃上げ水準には
追いついていない状況です。医療人材の確保・定着には、十分な人件費の確保が不可欠です。
物価高騰
薬剤費や建築費、食材費ひいては医療機器の購入費用など、あらゆるコストが
物価高騰により押し上げられています。医療材料も含め価格上昇が、医療機関の経営を
圧迫する大きな要因となっています。
「地域医療の崩壊」への懸念
会議では、「地域医療が崩壊寸前」という強い懸念が表明されました。人件費や物価高騰に
対応できないままでは、医療機関の閉鎖や人材流出が加速し、地域に必要な医療提供体制が
維持できなくなる恐れがあります。これは、地域住民が適切な医療を受けられなくなることを
意味し、国民の健康と生活に直結する喫緊の課題です。
診療報酬改定に求 められるもの
診療報酬は公定価格であるため、コスト増をそのまま転嫁することはできません。
今回の議論が、単なる「効率化」だけでなく、私たち医療従事者が安定して働き続けられる環境を
確保し、そして患者さんに質の高い医療を提供し続けられる未来につながることを強く願います。
出典:中央社会保険医療協議会 総会第607回
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58058.html
PDF:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479599.pdf
