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2025年11月26日

AIによる医師事務作業補助業務への影響

 来春の診療報酬改定に向けて、医師事務作業補助体制加算のあり方についても議論が佳境に入って来ました。今回の議論ではAIなどICTツールの活用も重視されていますが、この動きは今後も加速するものと思われます。


 実は私自身は医師事務作業補助体制加算が設けられた黎明期の2010年頃、同加算が役目を終えて発展的に解消(例えば入院基本料の施設基準に組み込まれる)までの時間軸を、10年ちょっとと予想していました。この予測が全く当たっていないのは皆さんご存じの通りですが、それでも時代が前に進んできたことを、まずは歓迎したいと思います。


 医療秘書の歴史が長いイギリスでは、実は2013年にBMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)で"Doctors no longer need medical secretaries"という題名(あまりに生々しいですし、文字通りなので敢えて訳さないでおきます)の記事が掲載され、物議を醸したことがあります。もちろん炎上したのですが、それも想定内だったと思われます。歴史が長いからこそ、時代に合わせて変わり続けなければならない、という「愛の鞭」と捉えていいのではないでしょうか。


 さて、いちおうは医療情報学者の端くれである私も、AIを活用して、とくに文書作成業務は、どんどん削減していくべきだと考えます。将来的には「AIを全く活用しない病院には、医師事務作業補助体制加算1の算定を認めない」ぐらいでもいいとさえ思います。AIでもできることを忌避してすべて人力でカバーしようとしていたら、いくら人がいても足りませんから。


 とはいえ、BMJのその過激な表題については、私は全面的に反対です。AIにしても使うのは人間です。AI慣れしている方はよくご存じのように、AIで文書を作成すると「ちょっとAIっぽい文章」ができます。これをあたかも個々の医師が書いた文書のようにその医師に合わせてカスタマイズするのは、AIの使い方としてはちょっと問題です。むしろAIを口実にして院内調整し、標準的な文書のパターンを作って業務をスマートにしていく視点が重要です。それができるのは、「AIも人間(あえて幅を持たせておきます)も使いこなすスキル」を持った医師事務作業補助者です。


 だから医師事務作業補助者こそ、積極的にAIとお友達になることが大事です。(それはそれで別の問題が生じますが)「AIのことなら○○さんだよね」と言われるようになるというのは、医師事務作業補助者としては、とても素晴らしいことではないでしょうか。



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