日本の医療の未来について、産官学それぞれで、様々な議論が行われています。
とくに昨今では、政局を横目に、公的財源によるテコ入れに期待する声が高まってきています。
こうした現場の声は承知しつつも、もう少し冷静な議論が展開されていることにも注目したいものです。筆者は「未来」を考える上で、財務総合政策研究所が公表している「外部有識者等による研究所内講演会」資料は、非常に参考になると考えています。
その中でも、7月に同所の総括主任研究官が講演した「日本経済をどう再浮上させるか」は、特に面白いのでご一読をおすすめします。冒頭に「個人の見解」とは明記されているものの、その官職に照らして、それなりに重みのある意見といえます。そこには「国民の健康増進大戦略」と題して、まずは「平均寿命と健康寿命のギャップ」として、とくに女性は平均寿命と健康寿命に10年以上の差があることが示されています。その解決策としては、「健康増進産業=エンターテイメント産業」、「介護ロボットや高齢者支援AI」が掲げられています。そして、最後は「Senior Employment Creation (SEC)戦略」として、「高齢者を社会の依存人口から生産貢献人口へ。経済のBSが大きく変わる。」で締めくくられています。
つまり「高齢者=医療を受ける側」という単純な図式は、これから徐々に変わっていくのでしょう。そもそも医療を「担う側」と「受ける側」で背反事象にすること自体が、あまり論理的とは言えません。年齢とともに「医療を受ける機会」が増えるのは当然ですが、AIやロボットの力を借りながら、「医療を担う機会」を持ち続けることも当然の姿になっていくでしょう。
現在の医療界で、高齢であることが価値あるものと謳われているのは「プラチナナース」ぐらいでしょうが、センパイ活用という発想自体は様々な職種に広がっていくものと思われます。既に産業界では1日に2~3時間しか勤務しないパートタイマーも自然になりましたので、こうした働き方を、医療界の中でも徐々に考えていくことが必要ではないでしょうか。